「飛びだすビルド!」ミニシアター上映とダンスワークショップ

香津町保育所 6月9日
 6月9日、塩釜市にある香津町保育所を訪問した。塩竈市立香津町保育所は、小高い丘陵地の中腹にあり、グラウンドからは塩釜市内と海が眼下に広がる。今日は、ここでビルド・フルーガスさんによる映画上映会が開催されることになっている。仙台市から車で1時間ほどかけ、予定通り10時前に到着した。
 せわしくされておられる保育士さんにお声をかえるのは申し訳なかったが、窓越しに声をかけ、保育所に入れていただいた。私が到着したときには、すでにビルド・フルーガスの髙田彩さんは映像セッティングを終えられ、園長先生とお話しをされていた。ビルド・フルーガスさんは、地元のアーティストたちとともに、被災地域のこどもたちを対象にした出張アートワークショップや、映画上映(ミニシアター)に取り組んでおられる。ギャラリーは、津波で浸水したが、建物が無事だったこともあり復旧が早く、文具を届けるプロジェクトなど、積極的に被災者支援活動をされていて、アートNPOエイドでも協力させていただいている。震災以前から「飛びだすビルド!」と題して、出張アートワークショップを地元で開催していたため、地元保育所や幼稚園の方ともつながりがあったことから、アーティストたちとともにこどもたちに何かしたいと話し合い、こどもたちのために映画上映やワークショップをすることとなった。
 さて、この日の映画上映は、6月にお誕生日を向かえる園児たちのお誕生会と合同で開催された。15坪ほどの広さのホールに園児が集まり、6月がお誕生月のこどもたちが前に並ぶ。小さい子のなかには、誕生月ではないけれど一緒に並び出し、「◯◯ちゃんは違いますから、座りましょうね」と保育士さんに。微笑ましい光景だ。3月がお誕生月だった子は、一時疎開していたために、一緒に祝ってもらった。
 ばらばらにおしゃべりしているこどもたちも、保育士さんが歌いはじめると一緒に歌い、スクリーンに注目が集まっていく。髙田さんが映画を上映すると、こどもたちは嬉々として喜んだ。はじめに「おやすみ、クマちゃん」というポーランドの人形アニメ。おやすみ前にベッドのうえで今日の出来事をクマちゃんがふりかえるという映画。かわいらしいぬいぐるみのクマちゃんとそのお友達の生活が活き活きと描かれている。つづけて、チェコアニメの世界から「もぐらくん」。もぐらくんとそのお友達による、ちょっとした冒険が繰り広げられる。大人もじっと見入ってしまうアニメーションだ。「アメ、食べていいんだよー!」こどもたちは映画をみながら、大いに笑い、クマちゃんやもぐらくんに話しかけていた。
 園長さんが言うには、震災後、こどもたちの行動に変化が見られたという。不安から逃れるためか「以前はそんなことしなかったのに、いたずらするようになって、びっくりしたこともあった」という。そして、いま欲しているのは、こうした文化的な取り組みだと力強く語ってくれた。
 上映会ののち、園児たちと一緒においしい昼食をおよばれさせていただいた。ひとときの交流であったが、「また見せてね」「楽しかった」「また来てね」というこどもたちとお別れし、帰路についた。

日和幼稚園 6月10日
 翌6月10日は、石巻市にある日和幼稚園で、映画上映とダンスワークショップが開催された。丘の上にある幼稚園自体は、被害はなかったが、丘の周りは、360度すべて津波の被害を受けている。幼稚園の窓から見える景色に、言葉に詰まる。
 石巻は、魚の加工場や食品倉庫が被害を受けたこともあって、生臭いにおいが立ちこめているが、幼稚園に着く頃には、臭いも感じなくなっていた。
 幼稚園のホールでは、ビルドフルーガスの髙田さんほか、建築家の大林政夫さん、デザイナーの篠塚慶介さん、元児童指導員の佐藤明日香さん、そして、今日のワークショップ講師でダンサーの段家亜紀子さんが準備に取りかかっていた。明るい雰囲気で準備しておられたが、状況が状況だけに、緊張しているようにも見受けられた。
 10時すぎ、先生に引率されてこどもたちが入って来る。どの子も、なにが始まるのかとわくわくしているのが見て取れる。映画「もぐらくん」では、こどもたちは手を叩いて大喜び。恐いネコの登場シーンには、飛び上がるようにびっくりしている。素直な反応に、見ているこちらも、ついつい笑ってしまう。この日は、映画は1本だけ。そのかわりに、「ダンスでクイズ」ワークショップが待っていた。
 年長のこどもたちを対象にしたダンス。誰もが知っているミッキーの音楽にあわせて、ステップを踏む。先生方との話し合いで、こどもたちの知っている音楽を使うことになったそうだ。ダンスは、ちょっと難しいかなと思ったけれど、こどもたちはあっという間に踊れるようになった。ダンスをマスターしたら、つぎはクイズのルールを説明する。
 8人一組になり、4人が椅子に座り、スケッチブックを持つ。のこり4人がマジックペンを持ってダンスをする。音楽が鳴っているあいだダンスをし、ダンスが終わったときに正面にいる子のスケッチブックに、「かえる」や「うさぎ」など、与えられたお題の絵を描き、座っている子が、何が描かれているか当てっこするというクイズゲームだ。「なにこれ?」と、描かれた絵がなにか分からないという個性的な絵もなかにはあったが、みんな絵を描くのが好きなようで、短い時間ながら思い思いの絵を描いていた。
 ワークショップのおわりには、記念撮影をして、KUMON式ドリル(提供 KUMON)をプレゼント。お菓子を期待していたこどもたちは「なんだろう」という表情を見せたが、しっかりと「ありがとうございました」と、かわいらしい笑顔で受け取った。

樋口貞幸(アートNPOリンク)


「飛びだすビルド」は、このほかにも、5月15日「避難所・七ヶ浜中央公民館(キッズルーム)」、5月25日「清水沢保育所(塩釜市)」、6月7日「藤倉保育所(塩釜市)」、6月15日「新浜町保育所(塩釜市)」、6月16日「東部保育所(塩釜市)」、6月17日「鶴ヶ谷児童館(多賀城市)」にて開催されている。アートNPOエイドでは、当活動への支援のために引き続き寄付を募集している。

活動支援プログラム|001 ビルド・フルーガスの取り組みとアーティスト支援、こどもを対象にしたワークショップ、震災復興を目的としたミニシアターの活動に対する支援

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