遠藤一郎《RAINBOW JAPAN〜未来へ号バスがゆく!!〜》

2011年8月22日。大船渡市での「やっぺし祭り」をサポートした、アートNPOエイドの樋口貞幸も交えて、遠藤一郎から話を聞く。5月の「やっぺし祭り」の後、遠藤は大船渡や石巻の住民の求めに応じ、家屋の壁や店舗のシャッターに絵を描いたり、「やっぺし祭り」の続編を企画したりと、まだまだ東北で精力的に動いているようだった。そして、その合間を縫って、東京でのイベント参加や作品展示、打合せ等をこなしているという。かなりのハードスケジュールに心配になるが、次のプロジェクトも準備中なんだと、嬉しそうに語り始める。それが「未来へ号バス」の構想だった。

遠藤は車上生活を行っていることで有名だ。大きく描かれた「未来へ」の文字、出会った人びとが「夢」を書き加えたその車体は、見る者に強烈なインパクトを残す。この「未来へ号」で全国各地を走り回り、「GO FOR FUTURE」のメッセージを発信してきた。軽自動車からスタートし、現在の「未来へ号」は三代目だ。

そして今回、その「未来へ号」を30人乗りのマイクロバスにスケールアップさせるという。黄金町バザール2011の一環で、好条件でバスを借り受けることができた。東北の支援活動をする中で、石巻で免許も取得した。遠藤がドライバーとなり、これまで以上にたくさんの人、たくさんのモノ、そしてたくさんの夢を運んで行く。まずは、東北と横浜市・黄金町を往復しながら、人や物資の動きを促す「乗り合いバス」として運行させるという。運賃はカンパ制。こちらの想像を超えたその構想力に驚きつつも、これまでの遠藤の活動の蓄積がそう思わせるのだろう、突飛な思いつきではない、必然的な展開だとも思えた。

8月27日。「未来へ号バス」制作ワークショップの会場に向かう。黄金町交番の横。黄色と虹色で描かれた看板と黒板で作られた時刻表が目印の発着場に、ブルーのバスが止まっていた。今日の目標は、フロントガラスを除いた車体全てを白色の養生テープで覆うこと。明日、ペインティングで仕上げる。

遠藤の指示の元、水川千春や淺井真至ら遠藤が信頼を寄せる仲間たちが中心となって、全員でひらすらテープを貼り続ける。バスともなると、10人以上の参加者でとりかかっても、一日がかりの仕事だ。雨水がテープの下に入り込むと、テープの粘着力が落ちて簡単にはがれていってしまう。隙間が無いよう丁寧に貼って行かねばならない。

現場での遠藤は、黙々と作業をしつつも、通りがかりの人が足を止めれば気さくに話しかけ、興味を持つ人にはこのバスが何なのか紹介をする。フィールドワーク中の学生が遠巻きに見ていれば、大声で参加を呼びかける。遠藤は頭領として現場を見渡し、笑顔を絶やさず、フットワーク良く動き続ける。

目の前のバスがこれから東北と横浜をつなぐことを知ると、誰もが呆気にとられる。が同時に、私たちの想像力を刺激し、その意識を遠くの東北へと向かわせるに違いない。東北とここが地続きであること。そこで人々の生活が今この瞬間も営まれていること。「未来へ号バス」はその存在で、細切れになった私たちの視野と現実感覚を再度一つに結びつける。私はそう感じた。そして行こうと思えば、目の前のバスに飛び乗りさえすれば、実際そこに行けるのだ。

晴れたり曇ったり、途中雨が降るなど天気は不安定だったが、何とか作業は続けられ、青かったバスはどんどん白くなっていく。日が暮れ始めた頃、私はアサヒ・アートスクエアに戻らねばならず、作業途中ではあるがその場を後にする。明日は参加できないが、この天気が回復するのか、とにかくそれが気がかりだ。

8月29日。出発式当日。見事に仕上がった「未来へ号バス」がそこにあった。黄色地に青く大きく描かれた「未来へ」の文字。その上には七色の虹が加えられ、このバスでこれから全国各地をつなぐ、その架け橋になるんだという遠藤の覚悟が、可愛らしくも、ストレートに表現されているように思えた。
そして驚いたのだが、前日のペインティングは新潟の海岸でやり、今朝横浜に戻って来たのだという。テープ貼りの作業を終えた後、翌日の天気予報を確認すると、晴れマークは新潟だけだった。そこでバスに材料一式を積み込んで、すぐさま仲間と新潟を目指したと言う。あらためて、遠藤一郎の類い稀な行動力と実行力に驚かされた瞬間だった。

出発式は大勢の人で賑わっていた。ペンが回され、それぞれの「夢」を車体に書き加えて行く。記念クッキーの配布、関係者の挨拶、カギの贈呈、全員での記念撮影と式はテンポ良く、和やかな雰囲気のなかで進んでいった。最後、遠藤が、これまでと変わらぬ強い意志を持ってやっていくと宣言し、初めての乗客たちとバスに乗り込んだ。集まった大勢の人たちが見送る中を、バスは大船渡に向けて力強く出発していく。このバスが今後東北でどのような展開をみせるのか、その報告を待ちたいと思う。

坂田太郎(アサヒ・アートスクエア/アートNPOリンク)


参考情報
遠藤一郎「未来へ号バス」乗車予約方法については、下記ウェブアドレスを参照
http://koganecho.net/koganecho-bazaar-2011/news/08/news-121.html

遠藤一郎ウェブサイト
http://goforfuture.com/

映像:3.11アート・ドキュメンテーション/岩手県大船渡市
http://anpoap.org/?p=1199

レポート:「やっぺし祭り」に参加して」 執筆:漆崇博[AISプランニング]
http://anpoap.org/?p=1182

レポート:大船渡「やっぺし祭」
http://anpoap.org/?p=1103

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