11.3 PROJECT―加藤翼・引き興しイベント「The Light Houses」

11月3日 豊間へ
福島県南の沿岸部、いわき市平豊間で行われた、加藤翼さんによる11.3 PROJECT 大引き興しイベント『The Light Houses』に伺いました。
いわき駅から路線バスに乗り、田んぼや畑を抜け、コトコト揺られながら約30分。臨時バス停「二見ヶ浦」へ向かう途中、たくさんの人と大きな木製の「瓦礫による建造物」が見えてきました。会場は津波に流されることなく残った、塩屋崎ホテルの隣の広場。そこに、地元の方と思われる、笑顔にすてきなしわを刻んだみなさん、草を摘んであそぶちいさなこどもたち、黄色いジャケットを着たボランティアさんたち、他所から参加している若い人々など、さまざまな人たちが、遠くに海を眺めるこの場所に集まり、にぎわいの空気がバスまで届いていました。

「ここのあたりにも家があったけれど、全部流されたんだよ」会場隅で行われているチャリティバザーの店番をするおじさんが教えてくれました。
そこに、いまはなにもありません。広場の向いの家屋では、津波で流されてしまった1階を修理されているところで、津波が「ここまで来た」ということがわかりました。バザー会場の隅には、4つの大漁旗。海はすぐそばです。漁を営んでいた方がいらっしゃることがわかります。
引き興しがされる同じ場所では、演歌のチャリティーコンサートも行われていて、地元の方々は輪になり、仮設のちいさなコンサートの舞台を囲み、声を大きく出し、ともに歌われていました。

演歌のチャリティーコンサートが終わり、引き興しの準備が始まると、一斉に人が綱に寄り、綱を持ちはじめます。軍手をしっかり用意してきている地元の方もいらっしゃいました。お話を伺うと町内の回覧板でこの企画のことを知ったそう。
引き興しは、引き興しの最中に建造物が倒れてしまったりしないよう、引手の人数や位置のバランスを考えます。
加藤さんが建造物の上からみなさんに指示を出します。「右の方、人数が多いですので、裏へ回っていただけますかー」この呼びかけには、若いメンバーが素早く応じて動きます。地元のみなさんは、綱をもちながらわいわい笑顔でお話。こどもたちは早く引きたくてうずうず。数分間の調整が済み、引き興し開始。みるみるうちに大きな木製の建造物が引き興されます。「引っ張りすぎないようにおねがいしますー」と加藤さんから声がかかりますが、みなさん夢中であまり聞こえません。ぐんぐんと建造物が引き興されていきます。
建造物からのびる、無数のトラロープがピンと張り、引く人の体は後方へぐっとバネをもちながら倒れます。目には見えないはずの「力」がそこに確かに見え、その先で力を受けた物体がじりじりと動き出します。昔、人間が物を動かすときには、きっとこのようにしていたんだろうと、ピラミッドなど古代の大きな建造物に思いを馳せました。

あっという間に木製の大きな建造物が立ち上がり、一斉に拍手があがります。当初の情報では、引き興しに余裕をもって2時間ほどの時間がとられ、それでも立ち上がらない場合もある、とのことだったので、そのスピードにあっけにとられました。引き終わったみなさんは、一度大きく拍手をした後、叩く手を止め、再び立ち上がったそれを見上げました。
見上げられた目は、確かに未来をつかもうとするものであり、光を受けるそれは、うつむいて地面を見る目とは圧倒的に異なるものでした。

何度も灯りのともる 潮風の中の時間
立ち上がったものは灯台。そこには、塩屋崎の岬で、海を照らすことのなくなった灯台を、もう一度引き興し灯りをともす、という意味が込められていました。
引き興し終了後、地元の方の多くは近くの駐車場へさーっと引き帰ってゆかれ、加藤さんはすごい数の取材の方に囲まれていました。わたしは地元の方とお話。
「加藤さんたちは、震災後、数人の若い人たちを連れグループで、豊間にボランティアに来てくれていたのね。そこで整体やマッサージをしたり、おいしいものをつくってくれたんです。生ハムとかね、持ってきてくれてね。差し入れをしてくれたりしていた。そんな中でこの企画をやりたいという話があり、今回の企画を行ったんです。プロジェクト自体は豊間区が共催をしていて…」とお話を伺っていると、2人の地元の方がこちらへ駆け寄られた。「おおーこんにちわー久しぶりー」と主催者の方が声をかけていると、「さっき点灯式をされるとアナウンスがあったかと思うんですけれど、実はもう灯台に灯りはついてるんです…すでに区長が引き起こしのときに点灯されたんです…」と、苦笑い。「え?!そうなの?!」と主催者の方も苦笑い。こういったハプニングが後で記憶に残ったりするもので、潮風の中、この場所にあるさまざまな記憶とともに、ずっと背負い続ける時間とともに、それでもおだやかなときがあることを祈ります。

原田麻以
(NPO法人こえとことばとこころの部屋[ココルーム]東北出張所)


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