活動レポート|MMIX Lab / 3.11NPO+

仙台最大規模の仮設住宅「あすと長町ニュータウン」で、「アート・インクルージョン」を展開するMMIX Labの村上タカシさんに、これまでの活動についてお話しを伺った。
この活動は、アートNPOエイド活動支援プログラムの支援対象活動として寄附を募集している。「3.11NPO+による支援」をご覧いただきたい。▲アート・インクルージョン クリスマスプロジェクト2011(臼田香織) 撮影:MURAKAMI Takashi


アートNPOエイド活動支援を受けて、どのような活動をして来られたか

村上タカシ(以下、村上)|3月11日以降、必要に迫られて、炊き出しや緊急支援物資の配送など、いろいろな支援活動をやってきました。震災から数ヶ月経って落ち着いてきたところで、ようやくアートで何ができるだろうと考えられるようになりました。避難所から仮設住宅へと生活が移っていく中で、アート・ワークショップや、子どもの支援プログラムといったソフト事業による支援をしていくことにしました。アーティストが小学校や児童館を訪問し、アート・ワークショップをする「アートポンプ計画」、仮設住宅でのアートプロジェクト「アート・インクルージョン in ながまち」などを実施しています。
アート・インクルージョンというプロジェクトは、震災前の2010年11月から仙台長町で展開しているプロジェクトで、アートと福祉とまちづくりをテーマに、年齢や性別、国籍、障がいなどに関わらず、アートでまちを元気にしようと始めました。アートNPOエイドの活動支援は、アート・インクルージョンのなかの、とくに高齢者向けや子ども対象のアート・ワークショップに活用させていただきました。
このアート・インクルージョンは、仙台を拠点に活動する障がい者支援NPOのほっぷの森や生活困窮者支援NPOのワンファミリー仙台、音楽系の人や僕のような美術家など、いろんな人が参加する実行委員会が運営しています。当初は、年1回長町のまちなかで開催する予定でしたが、2011年3月に大震災がおき、長町に仮設住宅ができたことから、新しく住民になった方も交えたアート・インクルージョンを、仮設住宅なども会場にしてやろうということになりました。

アート・インクルージョンは、どういう活動?

村上|プログラムは、ワークショップが多いですね。アート・インクルージョンは、継続的に開催することに意味があるので、震災以降、6月、8月、10月、そして12月にはクリスマスプロジェクトもやりました。アーティスト・開発好明のデイリリーアートサーカスという、トラックにアート作品を詰め込んで移動する展覧会があるんですが、それとジョイントする形で、高橋士郎さんのソフト彫刻を仮設住宅の広場で展開したりもしました。ソフト彫刻は、何メートルもあるゴリラやゾウのバルーンの彫刻作品で、子どもたちが遊べるようになっているものです。クリスマスには、ロウソクをつくるワークショップなどもやりましたし、サンタクロースと子どもたちが遊んだりもしました。横浜からはL PACKが、おいしい珈琲を淹れにきてくれたりということもありました。

▲写真:アート・インクルージョン クリスマスプロジェクト2011(ふらいパンダ)
 撮影:MURAKAMI Takashi

どういう人が参加している?

村上|長町にある「あすと長町仮設住宅」に住んでいる方です。おもに、高齢者の方が多いですね。未就学児童もいますが、若い世帯の多くは、みなし仮設に住んでいるので、仮設住宅には高齢者が多くなります。この仮設住宅には、233世帯入居していますが、子どもは数えるほどしかいません。子どもワークショップには、近隣の子どもたちも参加してくれています。
あすと長町仮設住宅は、仙台市の敷地のため、仙台市で被災した方を対象に建てられました。仙台市は、阪神淡路大震災の教訓から、集落やコミュニティがバラバラになってしまわないよう、最初は10世帯単位での入居を受け入れましたが、それが足かせとなって、あまり入居が進みませんでした。その後、条件を緩和し、仙台市、宮城県のみならず、福島などから避難してきた家族も受け入れるようになり、いまはほぼ埋まっているそうです。
あすと長町仮設住宅の自治会は、非常に早い段階で立ち上がっていました。5月に仮設住宅が完成して、6月のアート・インクルージョンに向けて自治会長さんと打合せをしたわけですから、他の仮設住宅に比べても早かったのではないでしょうか。
自治会が窓口となってくれたこともあり、ワークショップもうまく進めることができました。プロジェクトをやっていると、当然ながら住民とも話す機会が増えてきます。いろいろな話しを伺うなかで、私たちの一方的な想いではなく、住民の要望を伺って可能な範囲で対応したり、市に伝えたり、他の団体を紹介したりしています。要望は、住宅環境に関する改善要望などが多く寄せられますね。

▲写真:仮設住宅ラッピング計画(中川和寿) 撮影:MURAKAMI Takashi

その他の活動について

村上|2011年の6月中旬ぐらいから、仙台市の市民協働推進課と協働するプロジェクト「3.11メモリアルプロジェクト」をやっています。災害の記録は、多くの方が写真や映像で残していますが、現物がない。瓦礫が無くなっていくなかで、残すものは残すべきだということを行政と話しをして、理解をしてもらいました。巨大な船などは行政とやり取りをし、道路標識のように車で運べるくらいのものは、車にいれて保管するという活動を始めています。それらを回収して保管すると同時に、そのような活動がなぜ必要かというのを理解してもらうための展示報告やコンセンサスを形成するためのトークセッションなどをやりました。そのときに、アートNPOエイドが無償貸出しているポータブル音響セットをお借りすることができ、助かりました。ほかに、津波で失われた桜の木を植樹する「桜3.11_学校プロジェクト」なども行っています。
仮設住宅は、整然と無機質な建物が並んでいるので、住宅の前を通学する小学生たちに「なんだろうここは?」という印象があったらしく、それを聞いた住人がショックを受けたということがあったそうです。仮設だとしてもそこに住んでいるわけですから、そこをいかに心地よい場所にしていくかというのを考えたい。あすと長町仮設住宅の自治会長さんと相談するなかで、住宅の壁面に絵を描きましょうということになりました。仙台市からも許可が降り、中川和寿という若いアーティストらと組んで壁を彩るプロジェクト「仮設住宅ラッピング計画」が始まっています。233世帯あるうちの、13棟の壁面全部を彩る予定で、いま7面まで完成しています。
▲写真:MMIX<3.11メモリアルプロジェクト>(気仙沼) 撮影:MURAKAMI Takashi

寄付者のみなさまにメッセージを

村上|こういう活動をしていくためには、一過性のものではなくて、継続してやっていくということが大事だと思います。ただ、どうやって継続していくのかはまだまだ大きな課題ですが…。
こういう大きな災害のときは、アートの出番じゃないだろうと思ってしまいますが、アートって幅広くて、いろんな切り口や展開の仕方があります。たいへんな状況だけれど、アートに触れるなかで希望をもってもらいたいと思っています。
仙台だけじゃなくて、福島も、岩手も、青森もまだまだ多くの問題を抱えていて、なかなか進まない状況ではありますが、できる人が出来る範囲で復興を進めて行くしかありません。被災地に入って身体を動かして手伝う人もいれば、アイディアで協力する人もいるし、資金的に支援してくれる人などいろいろあると思いますが、とにかく忘れないでいてもらいたいということに尽きます。
現地でがんばっている人がたくさんいますが、5年、10年と長期戦になると思います。一歩一歩進んでいます。引き続き支援をお願いできればと思っています。

以上


インタビュイー:村上タカシ(MMIX Lab)
インタビュアー・文責:樋口貞幸(アートNPOリンク)
インタビュー:2012年7月10日 ニッセイ基礎研究所会議室

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