活動レポート|いわきぼうけん映画祭

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2011年2月「第1回いわきぼうけん映画祭」の開催から1ヶ月後に起こった東日本大震災。2年後の「第2回いわきぼうけん映画祭」へ向けて活動を続けていた「ぼうけん映画祭実行委員会」は、落ち着かない状況のなかでストレスを感じる子どもたちが、映画を観ることで、せめてひと時でもいいから気持ちを紛らわしてもらうことができたらとの思いから、アニメ作品を中心とした全10回の巡回上映会を実施した。

伝えるプログラム
避難所等における第1回市内巡回映画上映会
避難所等における第3回市内巡回映画上映会

活動支援プログラム
いわきぼうけん映画祭実行委員会による避難所でのこども向け映画巡回上映に対する支援募集

リンク
いわきぼうけん映画祭
いわきぼうけん映画祭ブログ(巡回上映会のレポートもあります)



アートNPOエイドでは、活動支援金のほか、映画上映機材のマッチングをさせていただきました。

増田伸夫(以下、増田)|アートNPOエイドで、オーディオセットとDVDプレーヤー、プロジェクター等の上映機器をマッチングさせていただき、全10回の巡回上映会の後半でそれらの機器を活用することができました。活動支援金については、いわきぼうけん映画祭として大阪や近江八幡や東京でのイベントに参加する際の移動費としてありがたく使わせていただきました。
 巡回上映会はいわき市内を中心に実施し、さらに要請のあった郡山と小野町でも行いました。ほぼ月1回のペースです。昨年後半には一時的な避難所は全部閉鎖になりましたので、大半は仮設住宅での集会所を会場に上映させてもらいました。
 上映したのは子ども向けのアニメ映画3本です。作品は各所からご提供いただきました。映画『あらしのよるに』と、3月に劇場公開予定だった『劇場版 アニメ忍たま乱太郎』、そして「第1回いわきぼうけん映画祭」でも上映した『HAYABUSA~BACK TO THE EARTH~』という3Dアニメです。これらの作品の中から各回のプログラムを作り上映しました。

避難所での上映会の様子はいかがでしたか?

増田|家族ぐるみで参加したり、子どもを上映会に預けて親御さんが仕事に行かれたりということもありました。始めの頃は数十人単位の方が参加してくださったのですが、8月以降は月を経る毎にだんだん避難所が落ち着いてきて、参加者が1、2家族のときもありました。上映会の告知は、仮設住宅で支援活動しているNPOに協力してもらうこともありました。コミュニティによっては子どもが多い所もあれば、少ない所もありますし、場所によって上映会への人の集まり具合は異なっていました。

巡回上映会の活動を経て、いまのお考えは?

増田|当初、巡回上映会を企画したときは、被災された子どもに、少しでも笑いやゆとりになることをしたいと考えていたんですが、巡回していくうちに、その考え自体が生意気なというのか、大それた考えだったんだなという気持ちになりました。活動の途中からは、誰かの家にお邪魔して一緒に映画を観るような感覚になりました。特にきっかけはなくて、それは当たり前といえば当たり前のことなんですよね。
 2011年5月に始めた当初は、まだ支援物資が滞っていたり、逆に多く届けられすぎていたりと、いろんな混乱があったような状況で始めた上映会です。その状況が落ち着いてきたころから、何かしてあげようっていうのはすごい思い上がりだなって考えるようになりました。私たちが被災地に住んでいる同じ住人として物事を見ないと何も始まらないなと。

つぎに、「いわきぼうけん映画祭」について、教えてください。

増田|「第1回いわきぼうけん映画祭」は2011年2月10日~11日の2日間開催しました。きっかけは、いわき芸術文化交流館アリオスで藤浩志さんが中心となって行われた「Alios plants!」というイベントです。そこは市民のモヤモヤの「種」を持ち寄る会だったんですが、『いわきって映画祭ないよね、だったら誰かがやったらいいんじゃない?』という「モヤモヤ」を企画書にして持ち込んだことから始まりました。
 第1回は、30数人の監督さんから38本の作品が集まりました。その他にも、ワークショップで作った作品を合わせると、42本の作品を上映しています。この映画祭は隔年開催で、第2回目は2013年2月9日、10日です。予定では40~42本の映画作品を2日間で一気に上映します(招待作、応募作、当日完成する作品を合せて全47本の上映が確定)。上映する方も大変ですが観る方はもっと大変だろうなって思います(笑)。いわきアリオス内の2会場を使って朝10時30分から夜の7時まで、びっしり2日間上映します。

第2回はどのような上映会になりそうですか?

増田|おかげさまで46名の監督から作品が集まりました。前回より2ヶ月も募集期間を短くしたにも関わらず、前回以上のエントリーがありました。リピーターの監督も数人おられますが、新規の参加がほとんどです。なかにはいわき市内の方やご家族が被災された方も含まれています。映画祭自体は、あえて震災や原発問題には一切中立的立場をとっていて『どんな作品でもいいですよ』と呼びかけていたので、それで戸惑われる監督も多かったようです。たとえば『被災地にこんな作品を送ってもいいのかな?』とか今回は震災をテーマにした作品も何本か寄せられていて、なかには観るのがキツイかもしれないな、という感じの作品もあります。ですが、それぞれの監督の「ぼうけん」が詰まった自主映画を、たまたまその場に居合わせた不特定多数の観客のお一人として楽しんでもらえたら嬉しいです。この映画祭は専門家による審査ではなく、映画祭に来て、その作品を観たお客様が、こりゃ面白い!と思った作品に点数を付けて、その点数により賞を決める観客コンペ形式です。観客として、自分たちの意見が反映されるという楽しみを感じてもらえたらと思います。ただ公募作品43本を2日間でいっぺんに上映するわけですから、当然見逃さざるを得ない作品も出てきます。作品を選ぶことも観ることも両方楽しんでほしいですね。
 そして、いわきという「場」に作品を寄せてくださった多くの監督さん方にはとても感謝しています。札幌国際短編映画祭や山形国際ドキュメンタリー映画祭など、全国各地の映画祭に行かないと観られなかった作品をいわきでまとめて観られるというのは、実はとても贅沢な環境なのではないか、と強く感じています。

最後に、ご支援いただいた方へのメッセージをお願いします。

増田|映像音響機器をご提供いただいたことに心から感謝しています。昨年で巡回上映会は終えましたが、音響機器は映画祭実行委員会が拠点として使わせてもらっているシェアスペースに常設していて作品の試写や選定のための上映の際に使わせていただいているほか、そのスペース内で常時使っています。また、せっかくのすばらしいサウンドセットですので、ぼうけん映画祭だけで使うのではなく、他の団体の方々にも自由に使っていただいたりとフルに活用させてもらっています。
 今回、近江八幡でのイベントに参加したり、支援してくださった方ともお話をさせていただいたりするなかで、東北のみならず関西からも私たちのような小さな団体の活動を見てくださっている人がいるということを知っただけで大変心強く、とてもありがたいことだと感じています。
 最後に、いわき、ひいては福島県全体が、原発事故の影響で放射線量が高いということを気にされている方も多くいらっしゃいます。それでもいわき市内は福島県内では比較的線量が低いです。
いわき市は被災地の、ある一地域に過ぎませんが、被災地というレイヤーを通して見るのではなく、そのレイヤーを取り除けば私たちはここで普通に生活していて、その延長上で行っている映画祭です。
それこそ、お母さん達が、かっぽう着のまま気軽につっかけを履いて観に行くような、そんな飾らない映画祭にしていきたい、そんなふうに考えています。

以上


インタビュイー|増田伸夫
聞き手|樋口貞幸
編集|内山幸子、樋口貞幸
文責|樋口貞幸
2012年11月18日 AAF2012報告会会場にて

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